「半沢直樹」に「涼宮ハルヒ」なぜ漫画・ドラマ・ラノベのタイトルには人名が入りやすいのか
- 1 はじめに
- 2 タイトルに人名が入っている主な文学・小説・漫画・アニメ・ドラマなど
- 3 必ずしも人名タイトルは最近だけのものではない
- 4 実在する人の名前と実在しない人の名前
- 5 人名に意味がある場合
- 6 人名が(ほぼ)置き換え可能なもの
- 7 ヒット作品の模倣?
- 8 ドラマについては漫画やアニメがルーツ?
- 9 既存タイトルと被らない
- 10 シリーズ化の利便性
- 11 リズム感・語呂の作りやすさ
- 12 終わりに
1 はじめに
「半沢直樹」、「日暮旅人」、「掟上今日子」、「トネガワ」に「大門未知子」…。
なんとなく、最近の漫画・ドラマ・ライトノベルには、タイトルに人名が入るものが多いような気がします。
そこで、少し、人名の入ったタイトルについて考えてみました。
なお、「(人名)は××ない」式のタイトルについては、以下の記事を参照ください。
2 タイトルに人名が入っている主な文学・小説・漫画・アニメ・ドラマなど
まず、これまでの作品で、タイトルに人名が入っているものはどのようなものがあるのか、おおざっぱに挙げてみましょう。
アガメムノーン(戯曲)(紀元前458)
オイディプス王(戯曲)(紀元前427頃)
源氏物語(小説)(1008頃)
ロミオとジュリエット(戯曲)(1595頃)
ハムレット(デンマークの王子ハムレットの悲劇)(戯曲)(1600〜1602頃)
ドン・キホーテ(小説)(1605)
ロビンソン・クルーソーの生涯と奇しくも驚くべき冒険(小説)(正式タイトルは「自分以外の全員が犠牲になった難破で岸辺に投げ出され、アメリカの浜辺、オルーノクという大河の河口近くの無人島で28年もたった一人で暮らし、最後には奇跡的に海賊船に助けられたヨーク出身の船乗りロビンソン・クルーソーの生涯と不思議で驚きに満ちた冒険についての記述」。1719)
若きウェルテルの悩み(小説)(1774)
モンテ・クリスト伯(小説)(1844)
ジェーン・エア(小説)(1847)
不思議の国のアリス(小説)(1865)
アンナ・カレーニナ(小説)(1875)
トム・ソーヤーの冒険(小説)(1876)
カラマーゾフの兄弟(小説)(1879)
三四郎(小説)(1908)
グレート・ギャツビー(小説)(1925)
のらくろ(漫画)(1931)
冒険ダン吉(漫画)(1933)
走れメロス(小説)(1940)
サザエさん(漫画)(1946)
シェーン(映画)(1953)
フラニーとゾーイー(小説)(1961)
おそ松くん(漫画)(1962)
ひみつのアッコちゃん(漫画)(1962)
水戸黄門(ブラザー劇場)(ドラマ)(1964)
Bonnie and Clyde(映画。俺たちに明日はない)(1967)
あしたのジョー(漫画)(1968)
ゴルゴ13(漫画)(1968)
ドラえもん(漫画)(1969)
Butch Cassidy and the Sundance Kid(映画。明日に向かって撃て!)(1969)
BLACK JACK(漫画)(1973)
モモ(小説)(1973)
キン肉マン(漫画)(1979)
グイン・サーガ1 豹頭の仮面(小説。ライトノベルとするかは争いがある。)(1979)
3年B組金八先生(ドラマ)(1979)
キャプテン翼(漫画)(1981)
ランボー(映画。原題はFirst Blood)(1982)
インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説(映画)(1984)
聖闘士星矢(漫画)(1986)
ちびまる子ちゃん(漫画)(1986)
ジョジョの奇妙な冒険(漫画)(1987)
らんま1/2(漫画)1987)
それいけ!アンパンマン(アニメ)(1988。原型の読み物は1969)
DRAGON QUEST -ダイの大冒険-(漫画)(1989)
うしおととら(漫画)(1990)
美少女戦士セーラームーン(漫画)(1992)
地獄先生ぬ〜べ〜(漫画)(1993)
名探偵コナン(漫画)(1994)
警部補 古畑任三郎(ドラマ)(1994)
レオン(映画)(1994)
フォレスト・ガンプ 一期一会(映画)(1994)
犬夜叉(漫画)(1996)
アリー my love(ドラマ。原題はAlly McBeal)(1997)
ブギーポップは笑わない(ライトノベル)(1998)
NARUTO(漫画)(1999)
キノの旅 -the Beautiful World-(ライトノベル)(2000)
アメリ(2001)
灼眼のシャナ(漫画)(2002)
特命係長 只野仁(ドラマ)(2003。原作漫画は1998)
とある魔術の禁書目録(ライトノベル)(インデックス)(2004)
トリコ(漫画)(2008)
這いよれ!ニャル子さん(ライトノベル)(2009)
ドクターX ~外科医・大門未知子~(ドラマ)(2012)
半沢直樹(ドラマ。原作小説は「オレたちバブル入行組」ほか。)(2013)
花咲舞が黙ってない(ドラマ)(2014。原作小説は「不祥事」)
探偵・日暮旅人(ドラマ)(2015。原作は2010)
地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子(ドラマ)(2016。原作小説は2014)
たくさんありすぎて全てを挙げるのはとても無理です。そのため、特に古い作品については、極めて有名なもののみに限っています。
なお、ロボットもの、ヒーローものについては、ロボット名、ヒーロー名がタイトルになっているものが多いですが、挙げだすとキリがないので除外しています。
また、思想書・宗教書・歴史書・歴史小説については、人名がタイトルになるのも当然なところがあるので除いています。
※ライトノベルについは、こちらにたくさんあげられています。
※文学作品については、こちらの回答にたくさんあがっています。
タイトルに登場人物の名前が入っている文学作品 - 趣味・旅行 解決済 | 教えて!goo
※その他人名タイトルに関するもの
ドラマタイトルに主役の名、近年なぜ多用されている? | ORICON NEWS
コラム:『イーライ~』『~チャック』『アリー~』...ドラマタイトルにもなる主人公の名前って!? | 海外ドラマNAVI
架空の人名のフルネームがタイトルに含まれている文学作品 - Togetterまとめ
3 必ずしも人名タイトルは最近だけのものではない
2のリストを見れば分かるように、人名を含むタイトル自体は、はるか昔からありました。
2で挙げた古めの作品については、極めて有名なものに限っていますから、数としても昔から相当な数があったといえそうです。
もっとも、はるか昔の人名タイトルと現代の人名タイトルでは意味合いが違う可能性があります。
かつては、マーケティング的な発想はないか、弱かったと考えられ、特に深い意図なしに人名をタイトルにした場合もあるでしょう。
それに対して、現代の商業作品について、深く考えずに人名タイトルにするということはあまりなさそうです。
原題の人名タイトルからタイトルを変更した「明日に向かって撃て!」、「俺たちに明日はない」、逆のパターンの「ランボー」、「半沢直樹」の例があるのも興味深いところです。
(なお、「ランボー」は、のちに日本のタイトルが逆輸入されたという説もあります。しかし、どうやら日本以外でも〔日本より前に〕「ランボー」というタイトルを使っていたようで、上記の説は疑わしいようです。)
4 実在する人の名前と実在しない人の名前
人名タイトルの中でも、その名前が実在する人物かどうか、という点で大きく分けることができます。
例えば、ソクラテスの弁明におけるソクラテスは実在しますが、ロミオとジュリエットのロミオ及びジュリエットは実在しません。
実在する人物の場合、人名を含むタイトルにする理由は分かりやすい場合が多いでしょう。
人物名を含むタイトルは、当該作品がまさにその人物に関するものであることを示すことができるからです。
一方、非実在の人物の名前のタイトルの場合は、そういう効果は期待できません。
5 人名に意味がある場合
非実在の人名のケースでも、その名前に意味がある場合があります。
例えば、「金田一少年の事件簿」。
タイトルの金田一少年(金田一 一)は、非実在の人物ですが、金田一という名字自体が、金田一耕助の孫であるという主人公の設定を示すものになっています。
別の例でいうと、「富士山さんは思春期」。
タイトルの富士山さん自体は非実在人物ですが、180cm超の高身長女子である主人公の性質を表した名字になっています。
これらのケースでは、人名をタイトルに持ってくる意味があると言えるでしょう。
6 人名が(ほぼ)置き換え可能なもの
4や5の例と違い、タイトルの人名が他の人名にも置き換え可能なケースがあります。
例えば、「涼宮ハルヒの憂鬱」。
この涼宮ハルヒは、ヒロインの名前さえ別なものであれば、(かつ、語呂を考えると、読み仮名4文字の名字+読み仮名3文字の名前であれば、)他の名前にも置き換え可能なのではないでしょうか。
(厳密には、「涼宮」や「ハルヒ」という名前から来る印象に意味があるのかもしれませんが…)
こうしたケースでは、特に、なぜタイトルに人名を持ってくる必要があるのか?という疑問が生じやすいように感じます。
ライトノベルのタイトルの長文化の傾向については、読者がタイトルだけで設定・あらすじが分かるようにするため、という説明がされることがあります。
(例えば、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」、「俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件」)
置き換え可能な人名の場合、人名だけでは、あらすじ・設定を示す機能はありません。
もっとも、人名に加えて、その人物の肩書きや説明が加えられている場合は、長文タイトルと同様の説明ができるかもしれません。
(「刑事コロンボ」、「警部補古畑任三郎」、「古見さんは、コミュ症です」「からかい上手の高木さん」など)
7 ヒット作品の模倣?
ライトノベルでは「涼宮ハルヒの憂鬱」、ドラマでは「半沢直樹」などの大ヒット作があり、その後の同ジャンルの人名タイトルは、これらのヒット作品を意識して付けられたということはありそうです。
以下の記事でも、ドラマにおける人名タイトルの増加について、半沢直樹の影響が指摘されています。
ドラマタイトルに主役の名、近年なぜ多用されている? | ORICON NEWS
8 ドラマについては漫画やアニメがルーツ?
上記の記事では、ドラマの人名タイトルについて、漫画やアニメでは人名タイトルが普通であり、そこにルーツがあるということが示唆しれています。
2で見た通り、人名タイトルは、必ずしも漫画やアニメに限らないので、少しこの説明には疑問があるところです。
もっとも、漫画やライトノベル原作のドラマが増えている今日、漫画やライトノベルにおける人名タイトルの多さがドラマにも影響してきた、ということはあるかもしれません。
9 既存タイトルと被らない
ネーミングの際には、既存のものと被らないようにする、ということが言われることがあります。
オリジナルの人名をタイトルに使えば、既存の他の作品タイトルとは被らないようにできますから、そのためにタイトルに使われる場合もあるかもしれません。
10 シリーズ化の利便性
涼宮ハルヒの〇〇、掟上今日子の〇〇、のように、一部の人名タイトル作品は、シリーズ化した場合に、「(人名)+〇〇」というタイトルが連続していいます。
人名タイトルの場合、シリーズ化した際、このようにタイトルのバリエーションを作りやすい、というメリットはありそうです。
11 リズム感・語呂の作りやすさ
「涼宮ハルヒの憂鬱」、「結城友奈は勇者である」のように人名タイトルの中には、語呂が良かったり、韻を踏んでいるものがあります。
人物名は自由に決められるので、人名タイトルであれば語呂の良いタイトルを作りやすいといえるでしょう。
12 終わりに
他に何か理由が考えられるようでしたら、ぜひ教えてください!
最後に、人名タイトルの漫画の一つ、「汐ノ宮綾音は間違えない」を紹介しましょう。
原作は文豪ストレイドッグス原作の朝霧カフカ。
ジャンルとしては、能力バトル漫画です。
主人公は、汐ノ宮綾音(下記画像)。見た目は、俺妹やレールガン的な雰囲気ですね。
その能力は、「靴紐を操る能力」。
能力バトル漫画においては、大して強くなさそうです…。
しかし、それを克服するのがこの漫画の設定。
この漫画では、一定の手順を踏むことで、相手の能力者と能力を交換することができるのです。
綾音は、この能力の交換と自身の知略を駆使して人類最強の能力者に立ち向かうことになります。
色々と気になる粗もないではないですが、能力の交換という発想が面白いマンガです
(汐ノ宮綾音は間違えない(朝霧カフカ、仲村ユキトシ)第1巻(角川書店)より引用)
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