今にも崩れそうな本棚の下で

漫画の感想を書いたり書かなかったりします。

刑事裁判官マンガ「イチケイのカラス」が面白い

 

モーニングで最近連載が始まったマンガ「イチケイのカラス」の話です。

 

試し読みはこちらから。

 

www.moae.jp

 

この漫画の題材が何かと言うと、刑事裁判官。

刑事裁判官である主人公の仕事ぶりが描かれます。

職業モノ漫画があふれてる昨今でも、珍しい題材ではないでしょうか。

 

カラスにマンガは似合わない?

 

そもそも、これまで、裁判官が主人公という漫画自体あまり記憶にありません。

有名どころでは、「家栽の人」くらいでしょうか。

こちらは、タイトルにも明らかなとおり、家庭裁判所の裁判官の話。

それ以外でいうと、裁判員裁判導入前後に、裁判員を題材にした漫画がいくつかありました。

裁判員の女神」、「アストライアの天秤」、「サマヨイザクラ」、「ジキルとハイドと裁判員」、「裁いてみましょ。」などなど…。

 

漫画だけでなく、ドラマに目を向けてみても、裁判官自体を主人公にしたのはあまり例がありません。

ジャッジ〜島の裁判官奮闘記〜」くらいでしょうか。

数えきれないほど作品がある弁護士や、「HERO」や「正義のミカタ」のある検察官とは大違いです。

 

自ら捜査をするわけでもなく、基本的には裁判所の建物内で仕事をしている裁判官の仕事は地味なので、フィクションの題材にはしにくいのでしょう。

 

そんな中で、刑事裁判官をあえて題材にしたイチケイのカラス。

果たしてこの選択の結果は、どう出るのでしょうか。

 

カラスは読者を選ばない?

 

そんなイチケイのカラスですが、第1話から「左陪席」など専門用語が飛び交います。

元裁判官を含めた弁護士の監修がついているからでしょう。

内容的にも、そこまでめちゃくちゃなものにはならなさそうです。

 

Twitterなどをみていると、感想をツイートしてる人には、弁護士や裁判官、書記官なども多く、法曹・裁判関係者の関心の高さが伺えます。

(悪くいうと、その割合が高すぎる気がしないでもない)

 

 「白ブリーフ」「要件事実マニュアル」などでおなじみの岡口裁判官。

はてなでブログも書いてるサイ太先生

 

 

4話でも、いわゆる首振り(合議)がさらっと描写されていて、細かい描写が光ります。

 

 

ただ、法律に詳しくない人向けにも、きちんと解説もでてきますから、わけがわからない、ということはありません。

むしろ、そういう人達が本来のターゲットかもしれません。

そういう意味では、イチケイのカラスは、読者を選ぶ漫画ではないとは言えるでしょう。

 

最近のカラス

 

最近といってもまだ数話しか掲載されていませんが、ストーリーは、登場人物の紹介が終わって、やっと話が動き出したところ。

典型的な裁判官の性格、とされる主人公と、やや変わり種の裁判長、右陪席裁判官との意見が食い違うところなどが描かれます。

こういうところの描き方は多分難しくて、そもそも、読者は「普通の裁判官」の思考が分からないんですよね。

だから、「普通の裁判官」の考えはこうですよ、というのを主人公のセリフ又は内心の気持ちで表現して、その上で、変わり者の他の裁判官の考えを示す必要があるわけです。

そのあたりが、多分、読者にはちょっと共感しづらいところもあるかもしれません。

ここをもっと分かりやすくしようとするのは、簡単で、主人公のキャラクターをもっと極端にすれば良いんです。

主人公は、「被告人はどうせ有罪だろ」と思い込んでいる、みたいな。

それでもそういうキャラクター造形はされていない。

その理由の一つを勝手に推測すると、裁判官(の少なくともマジョリティ)は、必ずしもそういう思考をしていないから、であって、そういう誠実さみたいなものが、この漫画の魅力の一つであるように思います。

また、別の話をすると、第5話についても、この証拠調べの結果が逆だった、という方が、ある意味では分かりやすい。

それでもそうしないのが、この漫画の良いところだなあ、という気がしています。

 

ストーリー的には、いよいよ動き出してきたところ。

今後、主人公がどう変わって行くのかが見どころです。

 

おわりに

 

なんともまとまりのない文章ですが、少しでも興味がわいたら、ぜひ読んでみてください。

 

※各見出しは、阿部智里の八咫烏シリーズのタイトルから採りました(カラス繋がり)