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今にも崩れそうな本棚の下で

主に漫画の感想を書くブログです。

その画像、ブログに載せて大丈夫?—漫画などの無断転載・引用について

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1、はじめに

 

先日、ブログ記事の画像について問題提起をした以下のブログ(id:jiohnさん)を読ませていただきました。

(追記:当該ブログは残念ながら削除されました)

ブログ記事の漫画画像やグラビア写真、それ著作権フリーですか? - JIOHNの日記


画像とはまた少し話が違いますが、WELQなどのキュレーションメディアでの盗用も話題です。

上記の記事については、簡単にブクマでコメントさせていただいたのですが、これを機会に、マンガ等の画像の転載・引用について私が理解しているところを述べたいと思います。

 

2、適法な引用についての結論

 

長くなるので、最初に結論を書いてしまうと、

・抽象的には、「公正な慣行に合致」し、「引用の目的上正当な範囲内で行なわれる」引用はOK

・具体的には、引用の分量、引用の必要性、出典の表示などに気をつけるべき

・肖像権やパブリシティ権には別途注意が必要

ということになります。

 

以下で詳しく説明します。

 

3、引用に関する著作権法の定め

 

この問題は、法律の問題ですから、最初に参照すべきは法令です。

問題となるのは、著作権法

著作権法32条では、以下のように規定されています。

 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

 この条文からすれば、公表された著作物については、「公正な慣行に合致」し、「引用の目的上正当な範囲内で行なわれる」引用は可能である(違法ではない)ということになります。

 

4、裁判例や学説

 

そうはいっても、上記の条文は抽象的です。

「引用の目的上正当な範囲内」などと言われても、具体的にどんな場合がアウトでどんな場合がセーフなのかよく分かりません。

そこで、参照すべきは、裁判例(特に最高裁判例)や法学者による学説です。

 

(1)パロディー事件(モンタージュ写真事件。最高裁昭和55年3月22日〔民集34巻3号244頁〕)

 

この事件は、被告が、原告がカレンダーなどに掲載していた写真の一部を削除してモンタージュ写真を作成し、写真集や週刊誌に掲載したというものです。

この事件で、最高裁は、旧著作権法30条1項2号の引用にあたるためには、「著作物の表現形式上、引用して利用される側の著作物と、引用して利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると合理的に認められる場合でなければならない」と判示しました。

この要件の前半部分を明瞭区分性(明瞭区別性)、後半部分を主従関係と言ったりします。

この事件は、旧著作権法についてのものですが、現在の著作権法の解釈についても「そのまま参考になる」と言われています。(小酒禮・最判解民事篇昭和55年度154頁)

現に、その後の裁判例でも、適法な引用に当たるかどうかにつき、この明瞭区分性と主従関係の2つの要件によって判断したものがあります。

 

(2)総合考慮説

 

では、上記の2つの要件だけを考えれば良いかというと、話はそう簡単ではありません。

その後、①引用にあたること、②公正な慣行に合致するものであること、③報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われることを要件とした上で(ここまでは条文そのままですね)、③について、目的、効果、採録方法、利用の態様等の要素を考慮すべきという考えが登場しました。

これは総合考慮説と呼ばれます。

この総合考慮説にたった裁判例もあり、知財高裁平成13年6月13日判決(判時1757号138頁)などもこれを採用しています。

 

(3)現状

 

数でいうと、(1)の要件に言及する裁判例と言及しない裁判例では、概ね拮抗しているとも言われており、まさにまっぷたつの状態です。

もっと言うと、(1)の要件を採用する立場でも、この2つ以外に要件を付加するか、付加するとしてどんな要件を付加するか、について、色々なバリエーションがあるところです。

結局、現状では、裁判例において、適法な引用の要件として、唯一絶対の定まったものはないと言って良いでしょう。

 

5、引用に際して気をつけるべきこと

 

では、ブログで漫画等の画像を引用したいときはどうすれば良いか?

判例がはっきりしない以上、どの説においても適法な引用になるように引用するしかありません。

具体的には、

①引用部分とそれ以外を明確に区別する(明瞭区分性、総合考慮説における利用の態様)

②引用部分と本文の量的なバランス(主従関係、総合考慮説における効果、利用の態様)

③必然性・必要性のない引用はしない(主従関係、総合考慮説における目的)

④出典を明記する(公正な慣行等)

などに気をつける必要があるのではないかと思います。

①については、そのままですね。文章であれば、はてなにおいては、引用記法というのがありますから、それを用いることも考えられます。

②については、大量に引用画像を貼り付けた上で一言コメント、というような記事は不適切な引用になり得る、ということです。

③については、本文と無関係な画像を賑やかしのために引用したりすると不適切ということになりそうです。

④についても、そのままです。どこまで詳しく明記すべきかは悩みどころですが、文化庁のサイトでは、著作物の題名や著作者名などが容易に分かるようにする必要があるとされています。最終的には、「公正な慣行」に合致するか等の観点から判断されるでしょう。

 

6、現実的には…

 

現実的には、出版社等の権利者が何らかのアクションを起こす場合、いきなり訴訟等を提起することは考えにくく、その前に何らかのコンタクトがあるものと思われます。

そういったことがあるまで好き勝手にやる、という人もいるでしょう。

しかし、本来的には、何か指摘される前に、自ら適法な引用を目指すべきだと思います。

また、著作権を侵害する記事については、ブログサービス上の規約違反になる可能性もあるので注意が必要です。

 

7、その他の権利関係について

 

以上は、著作権の侵害に関する適法な引用についての話です。

肖像権の侵害、パブリシティ権の侵害については、上記の引用の要件を満たしているとしても正当化はされませんから、別途考慮が必要になります。

8、参考文献等

 

上記に記載したものの他、以下のとおり。

・中山信広「著作権法

・飯村敏明「判批」著作権判例百選(第4版)118頁

・大鷹一郎「判批」著作権判例百選(第4版)124頁

・山内貴博「著作権法のフロンティア 01 引用」ジュリスト1449号73頁

著作物が自由に使える場合|文化庁

著作権なるほど質問箱

 

9、注意事項

 

以上の記載は、法律の専門家として確定的な意見・判断を示すものではなく、誤りが含まれている可能性もあります。

法的なトラブルについては、専門家等にご相談ください。

 

 

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